哀しくも切ない道中記『エムブリヲ奇譚』

4年 ago buildswc 哀しくも切ない道中記『エムブリヲ奇譚』 はコメントを受け付けていません。

山白朝子著の『エムブリヲ奇譚』。

この著者は他にもペンネームを持っています。知っている方もいることと思いますが、その名前は乙一であり、中田永一であります。

そんな著者が書かれたものなので、興味を惹かれました。

本書に登場する和泉蠟庵は、無名の温泉地を求めて旅する旅本作家なのです。

この蠟庵、おかしなことに道に迷ってばかりいて一度通った場所にまた戻ってきてしまうというのです。不思議です。

連作短編集なのですが、これが奇妙な話ばかりで面白いです。

小指ほどの胎児がなぜか生きているという話は、奇跡なのか怪異なのか不思議な話です。

気持ち悪い感じもしますが、これがまた最後にはほっこりした気分になります。

ラピスラズリという不思議な石の話では、何度も人生をやり直せるというのです。

人生を私もやり直してみたいと思うこともあります。

ですが、本当にそれが幸せに通じるのかは疑問ではあります。

不思議な温泉話もありました。

夜に温泉に入りに行くと、その人が消えてしまうというのです。

怖いですよね。神隠しなのでしょうか。

これもまた切ない話です。

いたるものが人の顔に見えてしまう村という話も怖いです。

異様な世界です。

食べ物が人の顔に見えたら、食べられません。気が狂いそうになってしまいそうです。

夜になると見える橋の話は、人の醜さを感じられました。

このエムブリヲ奇譚は、怖さもあるのですがどこか切なく優し気なところもある物語です。

ホラーではあるのですが、私は怖さの中にほっこり出来る物語が好きです。

名前は変えて書いていますが、どこか乙一であり、中田永一の顔が垣間見える気がしました。